配合飼料の作り方(その9)

(その9)

前回からの続きになりますが、日本では、配合飼料の栄養価を、牛用の配合飼料と豚用の配合飼料ではTDN(可消化養分総量)という単位で、ニワトリ用の配合飼料ではMEという単位で表示しています。MEというのは、Metabolizable Energyの略号で、日本語では代謝エネルギーといいます。
この図は、飼料に含まれる3大栄養素(炭水化物、脂肪、たん白質)が体の中でどのように利用されるのかをおおまかに示したものなんですが、前(その2)にも話したように、炭水化物と脂肪は、「酸素」、「水素」、「炭素」の3つの元素で造られているため、これらが持っているエネルギー(「総エネルギー」(GE:Gross Energy、GE)のうち、糞中に出て行かなかったエネルギー(消化できるエネルギーということで、「可消化エネルギー」(DE:Digestible Energy)と呼びます)はそのまま利用されます。
これに対して、たん白質は、「酸素」、「水素」、「炭素」のほかに「窒素」を含んでいます。窒素は体内で有害なアンモニアに変換されるために、アンモニアを尿素や尿酸などの無害な物質に変換して、尿として体外に排出する必要があるんです。このため、たん白質の場合には、可消化エネルギーの中で、アンモニアを尿素や尿酸に変換するために必要なエネルギーと、尿素や尿酸自体のエネルギーが損失されることになります。MEはこの損失分を加味した単位ということになります。

ひと口に三大栄養素と言っても、炭水化物と脂肪と、たん白質ではエネルギーの使われ方に違いがあるんですね。こららのエネルギー(GE)はどのように量るのですか?

 

ボンブカロリーメーターという機械で測ります。機械の外見はこの図の左側に示したようなものですが、内部には金属製のボンベという魔法瓶みたいな筒が入っていて、この中に飼料や糞などエネルギーを図りたいサンプルを一定量入れてから、ボンベ内を高圧酸素で満たします。これを水槽の中に入れて、ボンベ内のサンプルを燃やすと、サンプルが燃えるときに出る熱が外側の水に伝わって水温が上昇します。この水温の差を測ることにより、サンプルが持っているエネルギー量(GE)を計算するんです。

これまでに話してきたように、配合飼料には家畜にとって必要なエネルギーや栄養分が十分に入ってることが重要ですが、このほかにも考えておかなければならないことがあるんですが、なんだかわかりますか。

私たちだ食べる食品だったら「美味しい」っていうのも重要な要因なのですが、家畜の場合もよろこんで食べてくれるとかというのも考慮しているような気がしますが?

 

それも重要なことですね。

いくら、エネルギーや栄養分が十分に入ってる飼料でも家畜が食べてくれないのでは話にならないわけで、嗜好性っていうのは重要な問題になってきます。人間の場合だったら、昔、某社の青汁のCMにあったように、「まず~い、もう1っぱ1杯‼」なんてことは、家畜用の飼料の場合にはあり得ないですね。

それから、家畜に対して有害ではないもの、また、その飼料を食べて生産された畜産物に悪影響がない原料を使うのが絶対条件になります。
また、使用する原料が安定して供給されることも絶対条件になると思います。いくら素晴らしい原料でも、ある一定の時期に限られた量しか供給されない原料があった場合、この原料を年間を通して使おうとすれば、年間の必要量を一括して確保しておく場所の問題や、品質の悪化を防ぐ措置などが必要になってしまいます。
あとは、やはりコストパフォーマンスですね。お肉や牛乳、卵などの畜産物の生産費に占める配合飼料の割合はかなり高いために、同じ栄養価を持つ原料だったら、価格が安い原料を使って生産費を低減させるというような細かい配慮をしているんです。
(了)

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