飼料産業の最近の取組み~SDGsの観点より~ vol.4(日本の取組み 1)

《日本の取組み》
これまでの話は世界の今の流れについてでしたが、さて、国内の家畜飼料ではどのような取り組みをしているかということに移りましょう。
まずは「公定規格」です。これはそれほど新しい話ではなく歴史的なものなのですが、現状にふさわしいのかというとなかなか難しいところです。この公定規格の中に、環境負荷低減飼料の規格というのがあります。ここに書いてあるとおり、たん白質(窒素)を減らす、それからカルシウム、リン、特にリンを減らしていきましょうということです。たん白質を減らしても生産性を維持できるように、アミノ酸をしっかり強化することが重要になるため、アミノ酸の最低基準を作っています。このように子豚用と肉豚用に、別々の公定規格が示されていますが、配合飼料メーカーは、かなり以前からより先取りをしてたん白質の減量に取り組んできています。採卵鶏の飼料では、以前はたん白質が18パーセントから19パーセントありましたが、現在では2パーセントほど下がっています。子豚用の飼料でも、限界まで落としてアミノ酸を添加するようになっています。たん白質の減量はかなり進んでいるのです。また、リンの有効性を上げるためにフィターゼ(豚やニワトリなどの単胃動物が利用しにくい植物性のリンの利用性を改善する酵素)を利用して配合飼料中のトータルのリン(総リン酸量)を減らして、環境へのリンの排泄量を減らす動きが出てきています。

たん白質自体についても、消化率が優れたたん白質源を活用して行こうという動きが進んでいます。例えば、大豆かすやナタネかすといった植物性油粕や、DDGS等を主体に使っています。エネルギー源についても、豚では「可消化養分総量(TDN)」という値を使ってエネルギーを計算するのですが、そうではなく、代謝エネルギー(ME)や正味エネルギー(NE)という値を使うことによって、より精密な設計ができるようになりました。これらの値を使って設計することによって、飼料として与えるエネルギーの無駄を省くことができるのです。リンについては、排せつによる無駄を省くために、先ほどのフィターゼが非常に大きな効果を出しています。
下の表の中④がその他の機能性原料を示していますが、これは新しいカテゴライズが必要ではないかと前回お話ししたものです。これは、有機酸、消化酵素、生菌剤、それからいわゆるハーブ植物の抽出油(植物性のものから搾ったもので、エッセンシャルオイルと呼んでいます)が、機能性原料の範疇に入ります。また、最近見直されているのが食物繊維で、繊維を与えることで、動物の腸内細菌叢を整えていく効果があります。たとえば、セルロース原料もこの範疇に入ります。⑤は先ほどから話題になっている成長促進のための抗菌性物質で以前はかなりの品目数がありましたが、現在ではその3分の1くらいまで減ってしまい15品目しかありません。また、今後さらに減っていく傾向にあります。

(土橋裕司)

前を読む vol. 1 / vol. 2 / vol. 3
続きを読む   vol. 5 / vol. 6