食品廃棄物の飼料利用

(食品廃棄物の発生量)

国内の食品製造業、食品卸売業、食品小売業、外食産業からは、多くの食品製造副産物(醤油かすや焼酎かす等、食品の製造過程で出てくる副産物)、余剰食品(売れ残りのパンやお弁当などの食品としての利用がされなかったもの)、調理残さ(野菜のカットくずや非可食部等、調理の際に発生するもの)が発生しており、農林水産省の資料によると、その総量は年間2,000万トンにものぼります(図1、写真1~8)。

     

(食品廃棄物の飼料化)

このような食品廃棄物の約7割が再生利用されており、その中でも飼料原料としての利用が最も多く、食品廃棄物全体の5割強を占めています(図2)。これらの食品廃棄物のうち、パンの耳、お煎餅、乾麺などの水分含量が低いものは、そのまま粉砕して「パンくず」、「菓子くず」、「パスタくず」などとして流通・利用されていますが、食品廃棄物の多くは水分含量が高いため、「乾燥・粉砕して給与する」や、「そのまま細かくし、液状にして給与する」などの方法が取られています。しかし、単に、「乾燥・粉砕する」といっても、乾燥する際の温度によっては、出来上がった飼料(製品)の栄養価は過熱の影響を受けてしまうなど、充分な注意が必要となります。図3と4では、様々な食品廃棄物を混合して、異なる温度で乾燥した時の、豚における粗たん白質(CP)の消化率と、鶏における栄養価(代謝エネルギー、ME)にどのような影響が出るのかを調査した試験の結果ですが、乾燥温度が高すぎるとCP消化率やMEが低下してしまい、飼料自体が持っている栄養価を十分に利用できなくなることがわかります。

       

消化率や代謝エネルギー等について詳しく知りたい方は、こちらをお読みください

(安全性の確保)

食品廃棄物を飼料原料として利用する場合、トウモロコシや大豆粕などのように元々飼料原料として利用されているものとは別に注意が必要な点があり、農林水産省では、これらを未然に防止するために、「食品残さ等利用飼料の安全性確保のためのガイドライン」を設けています。

  • 不適切な保管や輸送による腐敗や変敗、細菌やウイルスなどの病原微生物による汚染
  • 包装容器や食器、箸、爪楊枝などの異物混入
  • 洗剤、殺虫剤などの化学物質などの混入
  • BSEの発生を防止するために、使用が禁止されている動物由来たんぱく質の混入

(エコフィード認証制度)

 また、食品廃棄物の利用率及び飼料中の栄養成分の把握、飼料化を行う関連業者の連携と、飼料化の際の工程管理などについて、一定の基準を満たした飼料を「エコフィード」として認証し、食品廃棄物を飼料として安心かつ安定的に 利用する取り組みも10年程前から始まっています。2018年3月末現在で、全国28事業所で製造されている49製品がエコフィードとしての認証を受けており、これらの飼料にはエコフィード・マークが付けられて流通しています(エコフィード”(ecofeed)とは、 “環境にやさしい”(ecological)や“節約する”(economical)等を意味する“エコ”(eco)と “飼料”を意味する“フィード”(feed)を併せた造語です)

 

(最後に)

このように様々な食品製造現場から発生する食品廃棄物の7割程度は再生利用されている現状にあります。ですが、食品廃棄物自体は2012年まではほぼ直線的に減少したものの、それ以降はほぼ横ばいとなっており、今後も発生量の抑制を図りつつ、余った分は有効かつ安全に利用してゆくという意識が必要であると思います。