飼料原料の供給と安全性確保

家畜に給与されている配合飼料や混合飼料には、トウモロコシ、マイロ(コウリャン)、小麦、大麦などの穀類、大豆油やナタネ油などの搾油工程 で出る植物性油粕(大豆油粕やなたね粕)、魚粉、ポークチキンミール、脱脂粉乳、濃縮ホエーなどの動物性蛋白質、精米や精麦の際に出る米ぬかやフスマなどのそうこう類、炭酸カルシウムやリン酸カルシウムなどの鉱物質原料、ビタミン類、アミノ酸、微量ミネラルなどの飼料添加物など様々な原料が使われています。
配合飼料・混合飼料の製造量と、使われている輸入飼料原料の推移はこのグラフに示したとおりで、配・混合飼料の製造量 は年間2,300万トン前後で推移していますが、全体の約80%は海外からの輸入に頼っています(財務省「貿易統計」より、単位:万トン)。

これら日本に輸入されている飼料原料はどのように生産され、その安全性を確保するためにどのような手法が使われているのでしょうか?

主な飼料原料の輸入量と配・混合飼料製造量(千トン)

FAQ

質問をクリックすると、回答が表示されます。

Q. 家畜用飼料原料として使われている原料はどんな国から輸入されているのですか?

日本の家畜用配合飼料の原料として多く使われているトウモロコシ、大豆油かす、魚粉の輸出国別の推移は図に示したとおりです(財務省:貿易統計) 。

トウモロコシの主要国別輸入量(万トン)

大豆粕の主要国別輸入量(万トン)

魚粉の主要国別輸入量(万トン)

Q. 家畜用飼料原料として最も多く使われているトウモロコシはどのように生産されているのですか?

米国農務省の資料(http://www.usda.gov/oce/commodity/wasde/latest.pdf)によると、2015年現在、年間およそ7億トン強の小麦、5億トン弱の米、13億トン弱の粗粒穀物(そのうち10億トン弱がトウモロコシ)、言い換えれば、人間の体重50キログラムとすると、500億人以上の人間の体重に相当する穀物が生産されていることになります。全世界の人口は現在約70億人であることを考えると、これらの穀物がすべて人間によって消費されているわけではないことがわかります。。粗粒穀物の全世界での生産量は13億トン程度ですが、トウモロコシはそのうちの10億トン近くを占めます。トウモロコシの中で多くの日本人になじみが深いスイートコーンは、実は世界のトウモロコシ生産量の中で1パーセントにも満たないマイナーな存在です。多くのトウモロコシはフィールドコーンとも呼ばれ、世界各地で家畜飼料(約6億トン)として利用され、トウモロコシ粉などの主食原料やデンプンの原料などとしても利用されています。そして約7000万トンが生産国から消費国へと輸出されていて、米国はその半分以上に当たる約5000万トンを輸出しています。ちなみに、米国では年間約3億5000万トンのトウモロコシが生産され、約1億3000万トンが家畜飼料、約1億3000万トンがそのほかの用途として国内消費されています。大まかに言って、米国で生産されるトウモロコシの約15パーセントの5千万トン弱が輸出に回り、その約30パーセント、すなわち全米のトウモロコシ生産量の約5パーセント弱にあたる約1200万トンが日本向けであると考えてもよい のです。

米国の飼料用トウモロコシ畑

 

トウモロコシからのエタノール生産と併産物のDDGS

穀類を原料としたバイオエタノールの生産は世界各地で行われており、それぞれの地域で多く収穫されている穀類(米国ではトウモロコシ、カナダやEUでは小麦)が利用されており、日本でも量的には少ないもののコメを用いたエタノール生産が行われています。(続きを読む…

Q. 日本ではどれくらいのトウモロコシが使われているのですか?

日本が海外から輸入しているトウモロコシは年間約1500万トンで東京ドームのおよそ20杯分に相当します。
このうちの約95パーセント以上を米国産が 占めています。これらのトウモロコシは、積載量がパナマックスと呼ばれるタンカーで粒のままで運ばれてきますが、このタンカー1隻が積むことのできるトウモロコシは約5万トンですの、単純計算すれば3日に2隻のパナマックスに満載されたトウモロコシが輸入されていることになります。なお、これらの1500万トンのトウモロコシのうち、飼料用は約1200万トン、残りは食品やデンプンの原料として加工されて使われています。

米国産トウモロコシの20粒に1粒は日本に輸出される


出典:各種統計をもとに作成

このように、大量にトウモロコシが使われているにもかかわらず、輸入されたトウモロコシは家畜飼料や食品原料として使われるているため、工場で加工されてしまうため、粒のトウモロコシを消費者が直接目にすることはほとんどありません。「大きなタンカーで海外から運ばれ、工場で大量に加工される」という、トウモロコシの流通にかかわる巨大なインフラの上に私たちの食生活は成り立っているにもかかわらず、私たちはトウモロコシについて思いをはせることはほとんどありません。このような、私たちの目に直接触れることがない「見えないインフラ」があまりにもスムーズに動いているため、それが「当たり前」のこととして受け止められてしまっているからです(「科学技術と社会~遺伝子組換え作物を素材とした検討~」三石誠司(日本学術会議公開シンポジウム「遺伝子組み換え作物とその利用に向けて」2010年8月6日)講演要旨集 から)。

クイズ

Q. 遺伝子組み換えトウモロコシはどのくらい作られているのですか?

2014年の遺伝子組換え作物の米国での作付面積は、トウモロコシでは全作付面積の93%、大豆では94%、綿では96%にのぼっています(http://www.nass.usda.gov/Newsroom/2014/06_30_2014.asp)。
米国での非遺伝子組換えトウモロコシは、トウモロコシ生産量の約7%を占めているにすぎませんが、日本の一部食品原料、また家畜飼料市場に向けて輸出されています。これは食品などとしての利用に関する安全性の問題ではなく、市場の要求に応えるものですが、主に河川や鉄道を利用した効率のよい国内輸送システムを含む確固としたインフラを基盤とした分別流通が、年間約200万トンと推定されるこの市場への対応を可能にしています。この分別流通トウモロコシを別にすれば、米国内で生産され流通しているトウモロコシは農場の段階から輸出港、そして日本での利用現場に至るまで、「穀物トウモロコシ」として特に区別せずに流通しています。逆に、単純計算すれば分別流通される非遺伝子組換えトウモロコシを除いた約1000万トンの米国産輸入トウモロコシの93%にあたる約1200万トンが遺伝子組換えトウモロコシであるということになります。

Q. 米国から輸入されているトウモロコシの安全性はどのように確保されているのですか?

トウモロコシを確実に日本に輸出するために、米国では強固で透明性の高い安全性確保システムを整えています。米国では、農薬の適正な使用に基づいた残留基準値の設定と順守、そしてその監視システム、カビ毒などの環境汚染物質の管理と監視のシステムを持っています。
また、遺伝子組換えトウモロコシについても、科学的で適切なリスク評価に基づく安全性評価が行われています。現実に栽培、流通されている遺伝子組み換え作物については、食品、飼料としての利用、また、生物多様性をはじめとする環境へのリスクや影響は、限りなくゼロといえます。

米国における輸出用トウモロコシに関するアフラトキシン汚染管理状況

米国からわが国に輸出されるトウモロコシに関して行われているアフラトキシンの管理状況を調査した内容(PDF:4.33MB)がご覧いただけます。

Q. 遺伝子組換え体飼料原料の安全性はどのように確保されているのですか?

わが国で遺伝子組換え農作物を飼料原料として利用する場合、海外の多くの国と同じように使用する前に農林水産大臣の認可をとる必要があり、安全性に関する審査が終了し、農林水産大臣により認可された遺伝子組換え農作物だけが、飼料原料として流通・販売できることになっています。
また、この審査と併行して、遺伝子組み換え農作物が給与された家畜・家禽から生産される畜産物の安全性に関しても食品安全委員会が行なうことになっており、OECD(経済協力開発機構)およびCodex食品規格委員会の考え方に準じて、以下の3点に焦点を当てた評価が行なわれています。
(1)その飼料作物中に組換え体由来の有害物質が生成されないか、また、それが畜産物(肉、乳、卵等)に移行する可能性はないか
(2)家畜の体内で、遺伝子組換えに由来する成分が有害物質に変換され、それが畜産物に蓄積する可能性はないか
(3)遺伝子組換えに由来する成分が家畜の代謝系に作用して、新たな有害物質を産生する可能性はないか
なお、トウモロコシのように飼料原料としてのみではなく、それ自体が食用としても利用される遺伝子組換え農作物については、飼料原料としての安全性評価だけではなく、食品としての安全性についても同時に評価が行われることになっています。
 
現在、わが国で飼料原料として使用が認められている遺伝子組換え体飼料原料はこちらでご覧いただけます。

Q. 飼料原料に含まれる可能性のある有害物質に関する安全性はどのように確保されているのですか?

ヒトまたは家畜等の健康に悪影響を及ぼす可能性がある危害要因について、農林水産省では残留農薬、かび毒(アフラトキシンB1、ゼアラレノン、デオキシニバレノール)、重金属等の化学物質(鉛、カドミウム、水銀、ひ素)について基準値を設定しています。

わが国では、飼料原料の多くを輸入に依存していることから、飼料原料の輸入段階からこれらの有害物質の混入を防ぐために「飼料等への有害物質混入防止のための対応ガイドライン」が制定され、飼料原料を取り扱う各業者ではこのガイドラインに基づいて、基準の遵守状況の確認と記録、品質管理・苦情処理・回収処理の手順書の作成とそれらに基づく業務の遂行、輸送及び保管に関する手順書の作成とそれに基づく業務遂行、教育訓練の実施と記録、サーベイランス・モニタリングへの協力などを行っています。